SHAKESPEARE IN LOVE
邦題 「恋におちたシェイクスピア」 (1998)
【クレジット】
監督 ジョン・マッデン
出演 グウィネス・パルトロー
ジョセフ・ファインズ
ジェフリー・ラッシュ
【作品の背景】
舞台は16世紀のロンドン。ロミオとジュリエットを執筆中のシェイクスピアが主人公。エリザベス女王を含め実在の人物が登場する史実を舞台にしたラブストーリー。第71回アカデミー賞で作品賞を含め7冠を獲得した傑作映画。
【レビュー】
この映画はまあ、日本人と欧米人では評価に差がでますね。というか欧米人でもイギリス人とイギリス人以外でも差がでることでしょうね。制作はアメリカですが、イギリス人に生まれていればよかった~と思う場面が多数ありました。
この作品は特にシェイクスピアの以下の2作品の知識がないと十分に物語を楽しめないと思います。
「ロミオとジュリエット」
結ばれない悲劇の恋愛劇。芝居内でのロミオの役割を映画内でシェイクスピアが演じる。
「十二夜」
ヒロインのヴァイオラが兄の名前を語って男装する作品。グウィネス・パルトローが演じたヒロインの名前はこの作品から。シザーリオは男装時の名前。
上の2作品に合わせて、当時の芝居や役者が社会的にどの様な地位にあったのか?女性は舞台に上がったら犯罪なの?神の前で結婚を宣言しちゃったら婚姻は取り消せないんですよね~。などの歴史的な知識も細かいニュアンスを知るために必要になってくるんでしょうかね。
さてそれでは具体的なレビューを。ロミオとジュリエットが舞台なのでラストはまあ結ばれないのはわかっていましたね。というか悲劇だからこそ不朽の名作になるんですよね。
それより気になったのは必要以上にキスしすぎですよね。キス魔ですね。正体が発覚してから舞台で隠れてキスしてますが、ばれないか冷や冷やしましたね。最終的に「とりあえずキスしとくか」ぐらいの頻度でキスしてますよね。
それにしてもエリザベス女王は凄いですよね。圧倒的な威圧感で周囲を黙らせる。猛烈な勢いでみんな跪いてましたよね。といってもまあ、あの当時のイギリスはまだ弱小国家でヨーロッパの片田舎の王国。今では伝説のエリザベス女王すら私掠船である海賊どもの親玉程度の扱いだと思います。
ちなみにヴァイオラが向かう新天地のヴァージニアは処女王(ヴァージン)であるエリザベス女王にちなんで名付けられたイギリスの新大陸植民地ですね。
時折でてくるロンドンとおぼしき風景も全体がくすんだ色で灰色一色の雰囲気。2階の窓からはゴミや排泄物を道にそのまま捨てているシーンなどはなかなかのものだと思いました。人々の服も貴族以外は彩りが少なく、くすんだ服。時代考証は完璧ですね。この時代のイギリスでは庶民は磁器はもちろんのこと陶器も使わずに木の器を使い手づかみで食べていたという文化後進国でありましたので・・・・
主役二人の演技は素晴らしかったですね。特にヴァイオラがトマス・ケントとして演技していた部分はうまく男性を演じられていたと思います。髪の毛はどこに収納したのかな?と疑問に思いましたが・・・。
独身の雰囲気がプンプンするシェイクスピアが実は結婚していたことには驚きましたね。映画が始まってからどうみてもメチャクチャ独身臭がしてましたよね。ちなみに実在の奥さんの名前は「アン・ハサウェイ」です。
それにしてもジュリエットは脚本上は12歳で実際に映画でも「12歳のジュリエット」と紹介されていましたが、ちょっと色々無理あるかなぁと思います。まあシェイクスピアがそう設定したのでこの映画が悪いわけではないですが・・・
色々書き連ねて全然感想を書いてないんですが、脚本もストーリーも時代考証も非常によく練られており、アカデミー賞で7冠達成したのも納得の作品です。演技も主演から脇役まで見事に役柄を演じており時折の小ネタにはクスリときます。惜しむらくは自分が西洋人でないことですね。もっともっと楽しめたのに・・・という感じです。
ちなみに競馬のオークス馬でシーザリオという馬がいました。意味は男装の麗人です。あしからず。
(2015/07/03)