「王様と私」というミュージカル映画があります。
この映画は「ミュージカル映画にとって必要な物とは何か?」ということがよく分かる作品だと個人的に思っています。
まず、この映画の素晴らしいシーンですが、例えば、王様はタイ王朝なのですが、タイの異国情緒溢れるエキゾチックな舞台を、東洋風の音楽を用いてカラー映像として素晴らしく仕上げています。
当時、実際にタイの風景や衣装を見たことない人はカラー映像の煌びやかなシーンに目を奪われたでしょう。
そして何と言っても見た人の度肝を抜かれるのは王様と私のダンスシーンです。飛び跳ねるような大胆なダンスはこの映画が傑作となるべき名シーンのであることを予感させます。
とにかくこのシーンはダンスが売りである数あるミュージカル映画の中でも最大瞬間風速が史上最高に達する程のそれはそれは素晴らしいダンスを披露します。
ミュージカル映画にとって、歌と踊りは生命線です。そしてそれを彩る舞台や衣装はより演技を引き立たせます。そういった意味で、王様と私は間違いなく、一流どころか超一流の作品であったと思います。
さて、ではそれほどの作品である「王様と私」現実の評価はどうなのかというと、「ウエストサイド」や「サウンドオブミュージック」ほど有名な作品ではありません。
ということは何か問題があったと言わざるをえないのですが、では何が問題であったのでしょうか。
それはズバリ「脚本」です。ストーリーの出来があまりよろしくありませんでした。特に最後に王様が死んでしまうのですが、「流石に死ぬのは展開早すぎだろ」と見ていて思いました。
ミュージカルは歌や踊りを取り入れるため、多少のストーリーの強引さはお約束として許されいるのですが、流石にそれでも「必要最低限」の脚本は必要だと思いました。
舞台背景や衣装と同じく、脚本も歌と踊りを引き立たせる大切なパートなんですね。そして、その部分に重大な欠陥があったため、この素晴らしい作品は傑作として後世に残せなかったのだと思います。
実際に、アカデミーでも「作品賞を除く」5部門(美術・衣装デザインなど)を受賞しているのをみれば、脚本以外は素晴らしいという評価を得ているのがわかります。(脚本がよければ、作品賞・監督賞など各部門を独占し、一躍古典作品に仲間入り)となったはず。
そういったわけでこの作品は間違えればとてつもなく映画史に残る凄い傑作作品としてのポテンシャルを持っていただけに残念でした。
王様と私を踏まえてから言えることは
ミュージカル映画には
1.(当たり前だが)素晴らしい歌と踊りが必要
2.作品を代表するとシーン(特にダンス)が必要
3.それ+最低限の脚本が必要
ということですね。それを踏まえると、誰か場面を作り替えてもいいから脚本を直して、リバイバルして欲しいなぁと思います。もったいないなぁ。