映画のランキングと偏見

映画のランキングと偏見

クラシック映画を観る上で大切なのは情報源です。大学の映画サークルにいてクラシック映画の情報などを交換できる人ならいいですが、多くの人は見た映画の感想を言い合う様な知り合いすらいない感じだと思います。

したがって、頼るべき情報源が本屋などで「読者が選ぶ洋画ベスト200」とか「映画通が選ぶ映画100」とかの本だと思います。または、雑誌の創刊50周年記念「ベスト映画100」とか。

私もそういった映画推薦本を図書館で読んだり、本屋で買ったり、ぴあを立ち読みしたりして情報を得ていたのですが、読んだ経験からそういったランキングにある特定の「バイアス」について2つの視点でお話したいと思います。

【選出者】

ここにキネマ旬報の年度別ベスト10があります。

キネマ旬報ベスト・テン』は大変権威ある賞で「芸術的に最も優れた映画」「娯楽的に最も優れた映画」を出発点としてスタートしました。1970年代を見てみましょう。

1977年 スター・ウォーズ

選考委員 9位
読者   1位

選考委員と読者の選出ではこうも結果が違うのです。基本的にランキングは芸術と娯楽を考慮にいれると娯楽作品はランキング内に入りにくいのです。私はターミネーター2はかなり完成度が高い作品だと思うのですが、やはり芸術・文芸色の強い方がランキングでは上位に入りやすいですね。これは俳優とコメディアンでは芸能人としては俳優の方が格が上という世間のイメージと近いと思います。

また、国が変わっても選出に違いがありスター・ウォーズと同年のアニー・ホールは選考委員は「10位」でしたが読者も「12位」を獲得しているつまらない映画です。しかし、この作品アメリカでは「アカデミー作品賞」を受賞しているのです・・・・・国が変われば評価も変わるものなんですね。

ちなみにキネマ旬報自体を毛嫌いしている人も多く「キネマ旬報が選出した歴代ベスト10とかどうせ1位が市民ケーンなんだろ?」的な感じの言い方をされたことがあります(この方はキネマ旬報の立ち位置をよくわかっていらっしゃる)。特にランキングの選出者が読者か専門家でランキングは大きく変わるのでよく選出者を見てください。

*まとめ 専門家は芸術性を重視。読者は大娯楽的作品を重視。

【時代】

キネマ旬報ベスト・テンに戻ります。

1972年 ゴッドファーザー

選考委員 8位
読者   8位

基本的に歴代ベスト10をすればどのような選出者が選んでも必ずベスト10入りするゴッドファーザーがまさかの当時8位。歴代全体でなく72年の1年間だけで8位ですよ。

ゴッホの絵が生前に2枚しか売れなかった話に近いものがありますかね。モーツァルトが死んだときに共同墓地に埋葬されたという話にも近いと思います。

ゴッドファーザーもそうですが、ヒッチコック作品全体が時代を経て評価が上がってきている感じがします。ベスト100をやると「鳥」は確実に上位に来ますし「めまい」「サイコ」は確実にランキング入りします。「裏窓」「北北西に進路を取れ」も評価を下げることはないでしょう。逆に先ほどあげたスター・ウォーズは読者ランキング1位でしたが、今の評価は一部のマニアに人気があるぐらいな感じだと思います。

そんなわけで、時代を超える普遍性で作品の評価が変わるということも作品評価の考慮に加えてみてください。個人的にゴッドファーザーの8位は当時もぶっちぎりで1位だと思った私には衝撃的でした。

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