THE SEARCHERS
邦題 「捜索者」 (1956)
【クレジット】
監督 ジョン・フォード
出演 ジョン・ウェイン
ジェフリー・ハンター
ナタリー・ウッド
【作品の背景】
モニュメントバレーの広大な風景が映像美として映える西部劇映画の名作。「AFIアメリカ映画ベスト100」において第12位(2007年)を獲得。分野別では西部劇部門「第1位」を獲得。監督はジョン・フォード、主演はジョン・ウェイン、舞台はモニュメントバレーと西部劇の定番中の定番であり西部劇映画の代表作となっている。
【レビュー】
ストーリーは、モニュメントバレーの壮大な風景にマッチしたリズムで全体的にゆったりとした雰囲気で展開していく。主演のジョン・ウェインは相変わらずの無口で不器用、それでいて社会から少し外れたアウトロー的な存在を演じる。いや、彼が演じるからそういう風に感じると言うべきか。エンディングで家族がそれぞれ家の中に入っていく中で彼だけが入らずにぶっきらぼうに扉が閉まるシーンなどはジョン・ウェインなんだなぁ~だと思わずにはいられない。
この作品を生理的に嫌悪する人も一部にはいて、その原因は他の西部劇映画と同じくインディアンへの人種差別などを挙げたりする方がいるけど私はちょっと違った意見を持っています。価値観を押し付けるわけではないですが、製作は1956年。公民権運動以前の作品であり現在の価値観で作品を評価するのはいかがなものかと思う。
それを言ったら「オードリーって凄く綺麗で可憐だけどタバコ吸ってるのよね~。」などとキリがなくなってしまうと思います。むしろ当時のアメリカの原住民であるネイティブ・アメリカンがどの様に白人にどのように扱われ、どのように大陸から追い出されていったのか、肌で感じ取れる歴史的資料の様な作品と見ることもできると思います。
ただ、そういった人たちも認めるのがモニュメントバレーの風景の綺麗さですよね。このサイトのバナー写真もモニュメントバレーの青空の写真です。私も自分のHPの画像に使うぐらいですから説明する必要もないですね。また、インディアンのリアルさも素晴らしいですね。襲撃する際の彼らの羽を飾った装束の見事なこと。
デビーを救出するために崖の上から居留地を見下ろすのですがそのシーンは風景も含めて圧巻。実際にあんな感じで生活してたのだろうなぁと思います。居留地内部のインディアンのテントなども非常にリアルで素晴らしいですね。
(通称 ジョン・フォード ポイント ここから見下ろす形で撮影された)
ちなみに私はこの作品の感想は「よくある典型的な西部劇映画だな」という感じです。「こりゃ~傑作中の傑作ですよ!」という感じではないですね。世間の評価と比べて少し低い感じですね。
その理由はいくつかありますが、一つはストーリーが今作より「駅馬車」の方が優れていると思うからですね。「以前に駅馬車を見たことあるんでそれほど驚かないです。」という感じで感動が薄れているのでしょうかね。
もう一つは実際にモニュメントバレーに行っているからですね。この作品は初めてモニュメントバレーがカラーで撮影された作品ですが見た人は度肝を抜かれたでしょうね。ただ、私は見ていたのでそれほど感動がなかったという感じですかね。
ただ、私以外にも同じような感想を持つ方もいる様です。実際にこの作品は公開当時は評価がそれほど高くなくアカデミー賞も候補にすら入ってないですね。多分、西部劇全盛の当時としては「よくある映画だな」という感じだったんだと思います。
しかし、この「The・定番」というのが非常に重要で西部劇の定番であるジョン・フォード、ジョン・ウェイン、モニュメントバレー、そしてよくあるストーリーというものが時代を経て西部劇の定番中の定番という名声へと変化していったのだと思います。西部劇はミュージカル映画と共に現在廃れてしまった古き良きジャンルです。その中で「西部劇の定番と言えば?」という問いが行われる様になり始めてから作品の評価を上げていったのだと思います。
ですから私個人としてもこの作品の西部劇映画第一位という評価には納得です。ただ、駅馬車を見てる側として製作順序が逆だったらと思わず考えてしまいます。捜索者を1939年にモノクロで撮影して駅馬車を1956年でカラーで撮影していたら脚本も含めてどうなっていたんだろうなぁ~と思わずにはいられないですね。
たった17年の間に起こった映像の進歩は凄まじいものがあるなぁと両者を比較して思わずにはいられないですね。今見ても見劣りすることない綺麗なカラー映像です。これは本当に50年以上前のカラーフィルム初期の作品なのかと疑問に思うほどです。
(2015/06/15)
ちなみに殆どの人が語っていないが、囚われた白人女性について。軍隊によってインディアンの居住地を壊滅した際に囚われていた白人女性が開放されるシーンがあった。女性は少女であったり中年であったり、どさくさに殺されていたりもした。見るに耐えないぐらい額に傷を負わせられていたり、発狂して英語をしゃべれなくなっていたりなど色々な意味で非常に興味深いシーンだと思った。