ザッツ・エンタテインメント

ザッツ・エンタテインメント

THAT'S ENTERTAINMENT!

 

 邦題 「ザッツ・エンタテインメント」 (1974)

「あなたの青春に-世界のトップスター125人が心をこめて贈る最高のエンタテインメント!」

【解説】

この映画は映画会社「MGM(Metro-Goldwyn-Mayer)」設立の50周年を記念して造られたMGM50年を振り返るという内容の映画である。

MGMは映画黄金期において出演者の言葉を借りれば「他の全ての映画会社のスターを集めたよりも豪華なスターを揃えたミュージカル映画の会社」であったが、1960年代以降はミュージカル映画が徐々に人気を無くしていったのと同様に次第にその力を失っていった。

本作品はそのMGMの歴史を歴代のMGMスター達がバトンタッチで紹介しながら振り返っていく。スター揃いの中で特に有名なスターは単独でフィルムカットを紹介される栄誉を受ける。

本作品はクラシック映画の知識量によって作品の評価が異なるのは当然と言える。ジーン・ケリーやデビー・レイノルズ、シナトラなどの往年のスターの現在の姿を見て懐かしく思うかどうかだ。ミッキー・ルーニーや娘のライザ・ミネリがジュディ・ガーランドを紹介したが、彼女が本作に存命で登場しないことは非常に残念である。

映画の最後にシナトラによりMGM史上最高の作品は「巴里のアメリカ人」という紹介がされているが、本作品の放映から40年近く経過してしまい、放映時(1974)と現在では過去作品への評価も大きく変わっていることだと思う。(セットでの撮影が当たり前のあの時代ではしょうがないが、カラーが登場して間もない当時にパリでロケを敢行し有名な場所の前で撮影ができていたら当時として更に、そして現代においても異なった評価を得られていたであろう。)

映画を振り返る以外にもMGM設立25周年記念に巨大スタジオをパーティーホールにしてスターが一堂に合わさって食事をしているパーティーのシーン(どんだけスターを揃えてるの。まさに圧巻!)やミュージカル映画への出演に難色を示す俳優に「契約」という言葉を使い何がなんでも出させる商業主義の話。また質が落ちても気にしない大衆的なミュージカル作品の乱造(そしてそれを気にしないファン)の話など往年の想い出として見ていて面白い。

ミッキー・ルーニーとジュディ・ガーランドのペアの紹介には「この後、役名だけが違ってあとは同じ中身の作品を何度も作ってヒットした」などとざっくばらんな紹介も笑えた。

フレッド・アステアの帽子立てとの踊りや重力を無視したトリックの踊りなどもよかった。彼専用のフィルムカットがあって安心した。ジーン・ケリーは「これまでで一番良かった共演者は?」という定番の質問に女優ではなく一度しか共演しなかったフレッド・アステアの名前を挙げていて感動した。

個人的にエスター・ウィリアムズのプールでの撮影と映画がヒットするたびに水辺のシーンの充実とセットが豪華になっていく話は面白かったし、今は見られない当時のレトロ感が満載であった。またガーランドのサマーストックという映画の一場面がマイケル・ジャクソンの「dangerous」という曲のダンスの元ネタになっていることを知ってびっくりした。


比較してみてください。

総じてこの映画はMGMを愛する人や映画史(MGMとはどんな会社か?)やミュージカル映画とは何かを知りたい人におススメの映画である。映画を知っている人の方が楽しめる作品であることは間違いない。だが、知らない人でもこの作品がミュージカル映画への興味を持つきっかけとなる作品でもあるので十分に見る価値がある。そして映画への愛を深めた後にもう一度戻ってきて見直せばまた新たな発見がある。そんな映画なのである。

(2015/05/15)

-ザッツ・エンタテインメント

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