八甲田山

八甲田山

 邦題 『八甲田山』 (1977)

【クレジット】

監督 森谷司郎
出演 高倉健
   北大路欣也
   緒形拳
   栗原小巻
   森田健作
   秋吉久美子
   前田吟

「天は我々を見放した」

【解説】

明治時代に実際にあった八甲田山での遭難事故である、史実を元にした作品。

出演する俳優も日本映画のオースルターといってもいい面々で安心して見ていられる。全編に渡って雪山でのロケとなっているが一面の銀世界の風景が、作品に常に過酷さを演出する効果的な役割となっていると思う。

劇中では青森と弘前のそれぞれ連隊が雪山踏破を競争したとなっているが、実際には両隊は偶然にも同時に八甲田山を踏破しようと試みたのであって、お互い部隊が山中にいるとは知らなかった様である。

指揮系統が混乱する大部隊での行軍、道案内の現地人を蔑ろにして大勢の犠牲者を出した青森隊に対して、メンバーを少数精鋭に制限し準備万端で行軍、現地の人に敬意を払い協力してもらい死者をださなかった弘前隊。その両隊の対比と責任者である両大尉の苦悩が非常にうまく表現されていた。

ストーリー自体は遭難事故の為に悲哀に満ちた悲壮感あふれる作品であるために誰でもリラックスして楽しんで観れるといった万人受けの作品ではないが、悲劇であるからこそ作品の評価を一層高めているかとも思う。最初から結末を知った上での鑑賞となるのでそういった意味でも約束された未来(悲劇)を見るのは少し辛かった。

ちなみに青森隊で川に飛び込んだり、雪の中で素っ裸になったりした兵隊がいたが、これは低体温症による実際の症状の一部でその他にも突然叫んだり、発狂や幻覚を見たりもするらしい。

男臭い作品の中で案内役の秋吉久美子は若々しくそして愛らしかった。部隊が集落を通り抜ける際に先頭を行進させる名誉を彼女に与えたのと(最後尾に歩かせることもできた)別れる際の総員での敬礼は、弘前隊の隊長の人柄を良く表しており見ていてとても清々しい気持ちになった。

キャストをみると多くの有名俳優が出演しているが、若かりし頃である事や雪の中で常に帽子をかぶり顔が雪で隠れ殆ど見えないことから全然気がつかなかったりした。ただ、大滝礼二はもう既に当時からお爺ちゃんだったけど(笑)

(2014/11/15)

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