LE SALAIRE DE LA PEUR
邦題 『恐怖の報酬』 (1953)
【解説】
この作品はカンヌでグランプリ(パルムドール相当)を獲得した作品であり半世紀以上たった現在もその評価を落とすことがない傑作である・・・・が、申し訳ないが私は少し違った感想を持っています。
ニトロをトラック運びいつ爆発するかわからないというスリルで作品の臨場感を出すというのはいいのですが、ちょっとツッコミを入れたい部分も多いような・・・
例えば山道の木の足場のシーンですが、それって別にニトロ関係ないんじゃないの?普通のトラックでも構わないし・・・と気になってしまって。また、ニトロ満載のトラック2台で行くのに伴走の車がないのもおかしいかなと。せめて前方1キロを先に走る先導車がないのもおかしいなと、などということを考えてイマイチ作品に入り込めず。
山道の下り坂の巨大岩は、ニトロで壊さなくても他に色々方法あるでしょうなどと思ってしまい・・・・ジョーが逃げるのはいいけど、なぜあそこまでボコボコにするのよ・・・・
というか、マリオは確実にジョー轢いたし。死んだけどあれは殺人でしょう。というか、池で止まらないようにあえてジョーを轢いたけど結局オイル池にはまり込んで無駄死にならぬ無駄轢きでしたよね?などと思っていたが、今考えるとこの作品は巨大岩の爆発のシーンあたりから狂気になりつつあったんだなと感じています。
ニトログリセリンを爆破の為に穴の中に垂らすシーン。まるで自分の命というか寿命を削る様な映画とは思えない緊迫したシーン。トラックが爆発して壮絶な死を遂げたシーン。原爆の爆破かと一瞬思える閃光でした。オイル池の中で立ち往生しないように相棒のジョーを轢いたシーンと、オイルの中で顔だけ出すシーン。轢いたことより窒息死するかと心配しました。
そして報酬を貰って帰りの山道で音楽に合わせ爆走するシーン。すべてが狂ってましたが、まさかトラックの破壊のシーンをあそこまでしっかり撮影するのかと驚きました。エンディングシーンを含め徐々に作品が狂気のダンスを踊っていったんですね。
また上映時間が2時間半もあるが、実際にニトロを運ぶまでに前半部分の多大な時間を使ってメキシコの荒れ果てた町とそこに住む貧困の人々を描き出しており登場人物の背景(なぜ命を懸けてまで危険な作業に従事するのか)を表現する以上の何かを監督は伝えたかったと思う。
監督の何かを訴えたいエネルギーとその屈折したパワーに圧倒された作品でありました。
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